8/8(木) 7:05配信
現代ビジネス
https://news.yahoo.co.jp/articles/27392b112d5eb617e6fea5161a80f9093ede30b6
2025年大阪・関西万博が開かれる大阪湾の人工島「夢洲」は、軟弱地盤や土壌汚染、アクセスの悪さ、貧弱なインフラなど、さまざまな問題を指摘されながら、IR(統合型リゾート)との相乗効果を狙う維新首長のトップダウンで会場に決まった経緯がある。
懸念は的中した。パビリオン工事は遅れに遅れ、一部工区ではメタンガス爆発が起こり、唯一順調に建設が進む木造リングは落雷の危険性が高いことが先日報じられた。
万博開催が決定した2018年から取材を続ける元大阪日日新聞記者のジャーナリスト、木下功氏は、最大のリスクは災害、とりわけ南海トラフ級の地震だと『大阪・関西万博「失敗」の本質』(ちくま新書)で指摘している。極めて不十分な防災計画の実態を、同書から抜粋のうえ、一部編集してお届けする。
15万人が避難? 現実味を欠く防災対策
大阪市議会の万博特別委員会では、もう一つ重要な質疑が行われている。防災対策だ。2023年以降に次々と表面化した工期遅れやコスト膨張の問題も確かに重要だが、世界から要人を招き、全国の子どもたちに参加を呼びかける万博の最重要課題は防災対策・安全管理だと筆者は考える。そのために万全の対策を施しているか、だ。
24年元日に能登半島地震が発生し、同年3月には万博会場の一部でメタンガスに引火したガス爆発事故があった。能登半島地震の被災地では液状化という悪条件が重なり、避難、救援、復旧いずれの段階でも大きな障壁となることをまざまざと見せつけられた。
ガス爆発では廃棄物埋め立て処分場から噴出するメタンガスの危険性を思い知らされた。人工島である夢洲は、能登半島以上の軟弱地盤とアクセスの悪さが指摘されながら、あえて大規模イベントの会場にしているのであり、同様の地震が起こった時に「想定外だった」などという言い訳は通用しない。
万博の開催期間は25年4月13日から10月13日の184日間。万博協会は来場者数を2820万人と想定し、ピーク時には1日22万人を超える来場者を見込んでいる。大阪市内から夢洲へのアクセスルートは前述した通り、舞洲との間に架かる夢舞大橋と、咲洲とつなぐ夢咲トンネルの二つしかない。
筆者が取材した防災の専門家によると、地震の際に橋とトンネルの二つのルートから22万人を逃がすことは不可能だ。大阪府・市は「南海トラフ地震を想定した最大震度6弱の揺れに対しても耐震性を備えている」と説明するが、実際に避難するためには本当に安全かどうかの確認作業が必要だ。
結果として安全が確認できない場合はどうするのか。来場者は夢洲内に残るしかない。万博協会はピーク時の7割、約15万人の来場者に対応する食料・飲料などの備蓄を用意する方針だが、避難施設はどうするのか。
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