デザインで競争力強化/ソニー VPクリエイティブセンター長・長谷川豊氏
企業においてデザインは今や形状のみでなく、機能や販売戦略、ひいては企業そのものの
ブランド価値を定める要素になりつつある。事業における重みが増す中、企業はデザインを
どうとらえ活用しているのか。各社の戦略を聞く。初回はソニーの長谷川豊バイスプレジデント
(VP)クリエイティブセンター長。(政年佐貴恵)
―専門組織ができたのはいつですか。
「1961年に前身の“デザイン室”が設置された。“人のやらないことをやる”というソニーの理念を、
技術とデザインで実現しようというものだ。現在の組織になったのは97年。デザインの領域を最大化し
包括的にとらえようと、組織の意味づけをし直した」
―変えた部分は。
「商品のデザインが中心だったが、対象を事業創出や研究開発、ブランディングまで広げた。
今では既存事業から新規事業まで、完成品はもちろん、デバイス段階からデザインする。
あらゆる物事においてストーリーづくりが、これまで以上に必要になっている」
―求められていることは何でしょうか。
「主には原点でもあるデザイン面の“美学”と“社内エージェンシー”。社内の点を線や面にする役割だ」
―「ソニーらしさ」とは。
「端的に言えば華美なアプローチをせず、シンプルな中に新しい形をつくることだろう。
ソニーらしさの維持に最も寄与しているのが、毎週行う“デザイン審議”だ。約20人ほどで
“これはソニーらしい”“らしくない”など意見を出し合い洗練させる。議論により“ソニーらしさ”
が醸成される。暗黙知を培う場にもなっている」
―今後の展望は。
「ソニーはあくまでも電機メーカー。ハードウエアとユーザーの接点を豊かにし、ここに価値を
持ってくるべきではないか。一方、ハードだけでなく、継続的なサービスが大切。その視点で
ソニーの注力事業であるエンターテインメントをどうつなぐか。新しいハードと同時に、
新しい楽しみをつくることにデザインで貢献したい」
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