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「私たちを、助けてください」と、彼女は透明なアクリル板越しに言った。両手を合わせ、拝むようにして。その目には、涙を浮かべていた。
「はやく夫と一緒に暮らしたい。彼のそばにいたいんです……」
涙をすすりながらそう語る韓国人のキムさん(30代、仮名)には、日本人の夫がいる。北関東で石工をしている男性で、知人の紹介で知り合った。
もともと日本が好きで、20代のころから観光客としてなんども訪れていた。ある時を境に飲み屋で働くようになり、そのまま暮らして6年ほどになる。オーバーステイだった。
勤務先のトラブルで、それが発覚。在留許可を求めたが「偽装結婚」を疑われ、まもなく収容されてしまった。もう1年以上が経つ。
「オーバーステイをしたことは反省しています。でも、人を殺したり、何かを盗んだりしたわけではないんです。刑務所だったら期間があるけれど、ここではいつ出られるのか、わからない。本当につらいです」
8人部屋で、プライバシーはない。家族が塀の外にいる人も多く、みな常に精神状況は不安定だ。些細なことでぶつかり合うことも、少なくはない。
弁護士を通じて2度目の「仮放免」の申請をしているが、費用はかさむ。本当に出られるのかという、不安も毎日にようにつきまとう。
「みんな不安で、いつもイライラしてしいる。それでも、いつか出られると、信じて待つしかないんです」
1日に1度、運動場に出られる時間と、公衆電話を通じた「外」とのやりとり、そして何より、月に1度の夫との面会が心の支えだ。キムさんは涙を流しながら、こう言った。
「夫婦で、幸せに、ふつうに暮らしたい。はやく、自由になりたい」
収容の可否を決めているのは、入国管理局だ。裁判などの手続きを経る必要はない。
入管難民法に基づいた「収容令書」で、最長60日間収容できることになっている。しかし、その後の審査次第では、いわゆる「強制送還」まで無期限に収容できる。
半年を超えると、「長期収容」と言われるようになる。なかには収容所を「はしご」する人だっているほどだ。こうした実態を人道的観点から批判する声は少なくはない。
韓国人のイさん(50代、仮名)は言う。
「もともとは収容所(ママ)があることも、知りませんでした。オーバーステイという悪いことをしたから、1度の収容で『綺麗になる』と思っていた。刑務所と同じように」
イさんには、キムさんと同様、日本人の夫がいる。北関東の工場で働く男性だ。
来日以来、飲食業を転々としていた。仕事先で偶然知り合い、そのまま付き合ったという。結婚を機に、オーバーステイを入管に申し出たが、やはり疑われたのは「偽装」だった。
「本当の結婚をしているからこそ、旦那を捨てて帰るなんてできない」
茨城県の牛久にある東日本入管に収容されたのちに「仮放免」されていたが、その後再び、東京入管に収容されてしまった。合わせて2年以上。申請などに伴う費用は、夫がファーストフード店でアルバイトをして捻出しているという。
「また入れられるとは、夢にも思っていなかったです。なんで同じ罪で……」
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