草スキー場やコスモス園があり、バーベキューも楽しめる市営金立公園(佐賀市金立町)。
駐車場から車を降りた人たちの多くは公園に向かわない。駐車場から薄暗いトンネルをくぐっていく。
ゆるやかな坂道を登ると再び駐車場。長崎自動車道金立サービスエリア(SA)だ。
その一角にある高速バス停留所「高速金立」に20人もの人が列をなす。
多久市の20代女性は朝から友人とともに列に。「夜は福岡でライブ。それまで天神で冬物の洋服を買う」。
毎月1回、休日に福岡へ。「天神はブランド店や飲食店がたくさんある。佐賀の店では物足りない」
バスは15〜30分間隔で、福岡まで約1時間。休日は1日47・5往復で、福岡と九州の県都を結ぶ路線では熊本、長崎に次いで多い。
九州で唯一、人口100万人を割る佐賀でも、それだけの利用者が見込めるからだ。
なぜ、ここに車を止めて福岡に向かうのか。
佐賀は車保有台数(2018年度)が1世帯当たり1・5台で、九州で最多。多くの人が「車頼み」の生活を送る。
だが、福岡には車で向かわない。車を止めて高速バスに乗った鹿島市の女性(19)は
「博多や天神は車線変更が難しい。駐車場も見つけづらい」。
佐賀市の女性美容師(60)は「長時間の車の運転は足腰の負担が大きい。JRと違ってバスだと天神直通なので」。
高速バスを天神で降りる間際には多くの乗客が「福岡天神きっぷ」を取り出す。
14枚つづりの回数券。佐賀と福岡の往復で1500円。JR特急の「2枚きっぷ」より800円安い。
佐賀市の20代男性は「佐賀駅前の駐車場は有料。公園の無料駐車場を使えば鉄道より得だ」と言う。