「被災地に負担」批判懸念 同日選への熱、一気に冷める
安倍政権は夏の参院選に向けて、同時に衆院を解散する「衆参同日選」を見送り、
当面は補正予算案の早期編成など熊本地震の対策に専念する構えだ。
衆院北海道5区補選は、自民公認が民進などが推す「野党統一候補」に勝ったものの、アベノミクスの失速も指摘される。
政権運営はこのまま「受け身」に回るのか、経済対策や外交で巻き返すのか、岐路に立たされている。
政権は地震対応に集中すると同時に、参院選に向けて視野に入れていた同日選戦略さえも地震を契機にリセットしようとしている。
ログイン前の続き悲願の憲法改正を目指す首相は夏の参院選で、自民・公明におおさか維新の会を加えた「改憲勢力」で改正の発議に必要な3分の2以上の議席確保を狙う。
このため、野党統一候補との一騎打ちとなった衆院北海道5区補選の結果を見たうえで、大型連休明けにも首相が最終判断するとみられていた。
しかし、14日の熊本地震で状況は一変する。
政権・与党内にあった同日選への熱は一気に冷めた。被災地では約6万人が避難生活を強いられており、当面は地震対応を優先せざるを得ない。
ここで被災自治体に負担をかける同日選に踏み切れば、批判を浴びかねないためだ。政権幹部は「衆院解散なんて話し合っている場合じゃないと国民誰もが思う」。
このため、政権は同日選に持ち込まず、参院選単独で「3分の2」を取るための戦略の見直しを進める。その大前提が地震対応に全力を注ぐ姿勢を打ち出すことだった。
補選投開票日という象徴的なタイミングを狙って補正を素早く打ち出したのも、そのためだ。
政権が次に見すえるのが消費増税の先送りだ。安倍首相は2014年末、消費増税の先送りを理由に衆院解散に踏み切った。
今回も同じシナリオが予想されていたが、ある閣僚経験者は「解散して信を問わなくても、消費増税先送りを世論が受け入れる。解散しなくてもいいようになった」。
これも、震災対応を理由として期待する。
一方、衆院北海道5区補選で自民は野党統一候補に苦戦を強いられた。
自民候補の勝利が確実となった後、首相は茂木敏充選挙対策委員長に電話で「参院選に向けて勝利できたのは大きい」と語った。
ある与党幹部は「首相もホッとしたのではないか。衆院選を絡ませなくても、参院選に集中してやっていくのがいいと思うでしょう」と話す。
しかし、看板政策のアベノミクスの効果に陰りが見え、自民議員の不祥事や失言も相次ぐ。
成長戦略の柱と位置づけた環太平洋経済連携協定(TPP)の関連法案も今国会成立を見送った。ある自民幹部は語る。
「地方にはアベノミクスは浸透していない。もともと同日選をやっても、参院選勝利の底上げにはならなかった。地震で同日選がなくなったけど、戦略の立て直しは難しい」
■野党内、共闘には評価も
別の民進幹部は「地震が発生して、予算で支援できる与党が有利になった」ことも敗因の一つとみている。
連携の効果を評価する意見もある。池田氏はシングルマザーとして働きながら2人の子供を育てた経験を語り、
アベノミクスが「格差を生んだ」として「誰一人も置いてけぼりにしない社会」をアピール。
野党4党は「反安倍政権」での結束を掲げ、民進の枝野幸男幹事長は「一本化で戦うことは間違っていなかった」と評価した。
民進の前原誠司衆院議員は23日、JR札幌駅前で共産の小池晃書記局長らと並んで「共産議員と一緒に演説をするのは生まれて初めてだが、
独善的な首相を止めるために協力する」と演説。前原氏は共産を「シロアリみたい」と批判したこともあるが、この日は肩を組んで連携を訴えた。
別の民進幹部も「ハードルを一つ乗り越えた」と語る。
共産は最近の衆院北海道5区の選挙で2万〜3万票を獲得していた。
今回、野党候補が一本化された効果を発揮し、朝日新聞社が24日に実施した出口調査でも民進、共産の両党支持層の大半を固めていた。
課題はあるものの4党が協力したことに、小池氏は24日夜、記者団に「初めてなので最初から100%というわけにはいかない。
参院選に向けて共闘を進め、必ず自公を少数に追い込む」と語った。
http://www.asahi.com/articles/ASJ4S5JCXJ4SUTFK00J.html