決勝戦は仙台育英に競り勝ち、池田(徳島)以来史上5校目の夏春連覇を達成した。
新型コロナウイルスの感染拡大は、授業や部活動など学校生活に大きな影響を与えている。高校野球も同様で、春の選抜、夏の東西東京大会のシード校を決める春季都大会も中止になった。東京都高校野球連盟の武井克時・専務理事に夏の東京大会の準備状況や見通し、球児へのメッセージなどを聞いた。(聞き手=前多健吾・東京総局長)
――春季都大会が中止になりました
感染拡大が収まらず、都教育委員会の通達で学校のクラブ活動を再開できなかったことから、開催を断念しました。例年のトーナメント方式による大会は難しくても、1試合でも試合の経験をさせてやりたいと、交流戦のような形を検討しました。しかし、3月末の時点で部活動はできておらず、球場の確保も難しく、中止を決めました。
――今、加盟校は練習しているのでしょうか
ほとんど練習していないですね。私学も、公立高校に合わせているようです。
――夏の大会の見通しを教えてください
5月の連休明けに学校が再開してくれることを望んでいますが、すぐに部活動ができる環境にあるかは分かりません。どのくらい練習時間を確保できるのか心配です。子どもたちの安全、健康を第一に考えれば、大会前、1カ月前後の練習期間をもらい、大会に臨ませたい。ただ、試合ができるまで、どの程度、時間が必要なのか、2週間なのか、3週間なのか、これは指導者と話し合いたい。
――春の中止で、夏のシード校が決められなかった
夏の東京大会は、シード校は3回戦から登場します。今夏もシード制は継続しますが、どのような形でやるか、具体的にはこれからです。開催の見通しがたった時点で、昨秋の都大会の結果を参考にしながら決めることになるでしょう。
――開幕が7月4日、決勝が8月3日に東京ドームの予定になっています
東京五輪・パラリンピック延期で、神宮球場の使用予定がなくなったので、延期決定の翌日に球場へ行き、高校野球に貸してほしいとお願いしました。ただ、大学野球、プロ野球の日程が不透明ですし、高校野球も日程が決められません。使用を快諾していただいた東京ドームとの調整もこれからになります。
――開催を危ぶむ声もあります
高校野球は、都や区市の自治体が管理運営する球場も使わせていただいている。公営の施設ですから、感染の状況次第では使えない可能性があります。高校野球だけ利用するというわけにはいかない。
東京の場合、素晴らしいグラウンドを持っている学校がいくつかあります。春秋の都大会は、こうしたグラウンドで1次予選を行っています。もし、公営の球場を借りられなくても、学校に協力してもらい、試合ができないか、と考えています。個人的な意見ですが、仮に無観客試合であっても、選手に試合をさせてあげたい。あらゆる方法を探りたい。収入がゼロになっても、大会を開きたいと思っています。
――指導者や保護者に伝えたいことは
命に関わることですので、野球だと言っていられる情勢ではありません。子どもの健康管理には細心の注意を払ってほしい。また指導者は、勉強と部活動の両立を念頭に、部活動が再開できた時、いつでも動けるコンディションを保っておくように目配りしておくことが大切でしょう。
――最後に球児へのメッセージを
まだ生まれて16、17、18年。これからの人生のほうが長く、いろんなことがあるはずですが、新型コロナウイルス感染拡大という強烈な事態に遭遇してしまいました。社会勉強と言うには、あまりに重く、大きすぎる体験だと思います。
しかし、乗り越えないと、次のステップはありません。どんなに苦しくても、今は辛抱して耐える時。戦争で、野球をやりたくてもできない時代もありました。その時の球児と同じ気持ちだと思います。どうにか夏の大会をやらせてあげたいと、都高野連役員のみんなが考えています。自分たちがやるべきことを守り、乗り越えてほしいというのが願いです。
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《第102回全国高校野球選手権大会東西東京大会》 7月4日〜8月3日の日程で実施される予定だった。開会式と開幕試合は神宮球場で行われるが、その後、東京五輪・パラリンピック準備のため、同球場は使えなくなり、東京ドームで準決勝、決勝を行うことが決まっていた。
第102回全国高校野球選手権(8月10日開幕予定、甲子園)各地方大会の「無観客開催」が検討されていることが27日、分かった。
新型コロナウイルス感染拡大を受け、日本高野連が全国47都道府県の高野連に「収入0」となった場合を想定した支出状況を調査していることが判明。
夏の甲子園にも波及する可能性が出てきた。今夏の全国高校総合体育大会(インターハイ)の中止が決まった中で、開催の道を探る。
関係者の話を総合すると、調査は今月中旬に行われた。
毎年行われる日本高野連への収入・支出状況報告の際「収入が0だった場合に支出はどのくらいになるか」という質問の回答を求められたという。
各高野連は夏の地方大会の入場料収入を運営財源としており、「収入0」は無観客を意味する。
保護者や控え部員の入場を許可したい考えの高野連もあり、無観客の定義は今後の議論が必要だが、それぞれで球場使用料や消毒に必要な経費などを計上し、回答書の作成にあたっている。
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、3月のセンバツや全国の春季大会が中止となった。
その中で日本高野連と主催者は安全な大会運営へ無観客開催が感染予防策となると見ており、同じく無観客開催を目指したセンバツから継続して検討材料としている。
地方大会も含めた大会開催には選手、チーム関係者やその家族の健康管理、全観客への検温、ベンチやトイレの徹底した消毒が求められる。
しかし、ある県の高野連幹部は「消毒液が確保できていない」と明かすなど各高野連単独では物資、人員確保に限界があり、無観客もやむなしとするのが現実的だ。
各高野連は年間最大の収入源を失うが、東京都高野連の武井克時理事長は「方法を考えて最大限開催へ準備する」と語った。
岩手県高野連の大原茂樹理事長も「無観客、規模縮小を大前提としながら準備はしていく」と話すなど、無観客を検討するところも出始めている。
前日の26日には、今夏の開催を予定していたインターハイの中止が決定。日本高野連の小倉好正事務局長は
「今回の決定に至るさまざまな検討内容を参考にさせていただきたい」と夏の甲子園の開催判断に影響する可能性に言及していた。
日本高野連は5月20日に運営委員会を開き、開催可否について話し合う見込み。さらに東北、関東など全国9地区の理事長が無観客で行った場合の支出状況を報告する見通しだ。
地方大会が無観客で開催となれば、夏の甲子園本番も無観客を視野に入れる可能性は高い。全国の高校球児は、昨年で約14万3000人。「甲子園」という夢をかなえてもらうため、開催の道を最後まで模索していく。