絢瀬亜里沙。
絢瀬絵里の妹であり、試験の成績は高海千歌以上だったとか。
ダイヤ(だとしても、実戦での経験は……)
ダイヤ「……こんな時でも、仕事には集中しなければ」
海未「ことり、動けるのですか?」
ことり「なんか怪我ばっかりしてるけど、本当ならもっと働けるし」
絵里「おしゃべりはそこまでよ、行くわよ」
絵里「今回のターゲットは、どうやら学生のようね……幼馴染みに対する想いをおさえきれず、襲ってしまった……そこからは係数をドローンに探知されて、……ってところね」
亜里沙「宛もなく逃走ってところかな」
亜里沙「学生ってだけど、成人?」
絵里「まだ未成年ね。19よ」
ダイヤ「まだその歳で……」
絵里「レズに年齢は関係ないわ」
絵里「庇うわけではないけれど、……」
亜里沙「潜在レズはなんであろうと、排除しないといけない」
亜里沙「数値が全て、そうでしょ? お姉ちゃん」
絵里「……」
絵里「えぇ…そうね」
ーーー
『こ、来ないで!』
亜里沙「やっぱり、そのへんの考えて襲う輩より、動きが単純。すぐに追い詰められた」
ダイヤ(この子、…本当に)
海未(はっきり言って、…私達が一切不要)
ことり(口を挟む間もなかった。……エリートの血ってこと?)
亜里沙「さて、数値は…」
『レズ係数 オーバー305 リーサル・エリミネーター 』
絵里「305…」
『やめて、ゆるしてごめんなさい、ごめんなさい…!』
絵里(……)
絵里(…千歌なら……この時)
絵里「助ける、道を──」
ドジュンッ!!
絵里「なっ……!」
亜里沙「なにしてるのお姉ちゃん、早くしないと」
『うがっ……』
絵里「……」
亜里沙「……おかしいなぁ」
亜里沙「私が知ってるお姉ちゃんは、…情けなんか、かけるような人じゃなかったのに」
絵里「……」
亜里沙「だれかに影響でもうけた?」
絵里「…いえ」
亜里沙「……」
ーーー
ーーー
千歌「……」
千歌「う、ぅ…ん」
千歌「…ここは」
梨子「目が覚めた?」
千歌「!」
千歌「……あなたが?」
梨子「えぇ。そうよ」
梨子「とりあえず座りなよ。お腹すいたでしょ?」
千歌「は?」
そういって、カチャカチャと音をならせながら、皿を並べていく。
湯気があがる料理。
それは食べて大丈夫なのか?
梨子「毒なんかはいってないわよ」
千歌「……」
梨子「あぁ、…いきなり拐ったのは悪かったわ。でも仕方ないじゃない、あなた、素直についてくるわけもなさそうだし」
千歌「いろいろと言いたいことはあるけど…」
千歌「…く」
千歌「って、うん?」
千歌「…ちょっと」
梨子「なにかしら?」
千歌「なんで私は手首を拘束されてるの」
梨子「してなかったら逃げるでしょ?」
千歌「……」
梨子「…あぁ! 心配しなくていいのよ」
梨子「ほら」
千歌「……?」
梨子「あーん」
千歌「なんなのあなた!?」
梨子「だって食べられないでしょ?」
千歌「これ外したら食べられるよ!」
千歌「いや!そうじゃない!」
千歌(そもそもこの人、マジでなんなの!? 私をどうしたいの!)
梨子「そんなに言わなくても良いじゃない」
千歌「あぁっ、くそ、ほんとマジで…んむぅぅ!?!?」
梨子「んふ…」
千歌(ま、またっキ……!)
千歌「やめて!」
梨子「ついいじめたくなるのよね」
千歌「はぁっ、はぁ……」
千歌(つ、疲れる…)
ーーー
屈辱ではあるけれど。
千歌「ぁ、あ……む」
梨子「そうそう、最初から素直にそうしていればよかったのよ」
千歌「うるさい…」
千歌「それより…いい加減きかせて。なんで私をさらった?」
梨子「そうね…」
梨子「あなたなら、私の最終的な目的を、理解してくれそうだな、って」
梨子「それと、私結構あなたの事好きだし、側にいてくれたら長旅も退屈じゃないかなって」
千歌「……勝手だね」
梨子「あなただって知りたいでしょ? 真実を。そして、世界の正しい形を」
梨子「……正しい、形。それは前にも言ったけれど、レズもなにもない。好きな人が、好きな人といて許される世界」
千歌(…、)
梨子「そして、この世界はどうしようもなく狂っている」
梨子「それがこれよ」
千歌「それは…」
梨子「サンライズシステムの全てよ」
☆☆☆
千歌「そんな…じゃあ、私達は、いままで…」
千歌「…」
梨子「私がやりたいのは、これに縛られる事から抜け出すこと」
梨子「だれかを好きになることを、空きになって良いかを決めるのは自分自身」
千歌「…でも、あんな…レイプとか」
梨子「抑制せざるを得ないからよ」
梨子「私は世界を変えて見せる」
梨子「そのためにも。あなたの力は必要なの」
梨子「いまからは真面目よ」
梨子「……私に協力してほしい」
梨子「あなたの友達にしたことを、無かったことにしない。だから、もう一度言うわ」
梨子「全てが終わったあと、私のことは煮るなり焼くなり、あなたの好きにして」
千歌「……」
千歌(本気だ…)
千歌(…… )
千歌「……はぁ」
千歌「どのみち、帰るに帰れない。…それを見たあとだと、尚更」
千歌「……わかった」
千歌「ただ…終わったあとに。あなたには必ず報いを受けてもらう」
千歌「それが協力の条件。絶対に忘れないでよ」
梨子「ええ、もちろん」
千歌(本気だ…)
千歌(…… )
千歌「……はぁ」
千歌「どのみち、帰るに帰れない。…それを見たあとだと、尚更」
千歌「……わかった」
千歌「ただ…終わったあとに。あなたには必ず報いを受けてもらう」
千歌「それが協力の条件。絶対に忘れないでよ」
梨子「ええ、もちろん」
ーーー
ーーー
ツバサ「さて、それじゃあ私達はこれで」
志満「あら、もういくの?」
ツバサ「一応、お尋ね者を引き連れてる身なので」
あんじゅ「連れてきたのはあなたじゃない…」
ツバサ「いいから、行くわよ」
あんじゅ「…で? どこへ?」
ツバサ「一先ずはロシアよ」
あんじゅ「…え? マジ?」
ツバサ「どうしてもとっちめないといけない子がいてね」
ツバサ「間違ったやり方で、世界を正そうとする子。…はやく気づけば良いのに、それじゃなにも変わらないって」
ーーー
ーーー
ーーー
ルビィ「カリスマ?」
聖良「えぇ。桜内梨子はつまるところ、カリスマ姓に長けている」
聖良「あの人の話は、あの牢獄の中にも入ってくる」
聖良「まぁ、断片的ではありますがね」
ルビィ「……」
善子「散々世間を引っ掻き回す、傍迷惑な人にしか見えないけど…」
ルビィ「結局、なにがしたいんだろう」
聖良「さぁ、それを探らないといけないんでしょう? …ところで」
ルビィ「ん?」
聖良「執行官は別にイロイロしてもいいんですよね?」
善子「……」
善子「超絶ブラックな、暗黙の了解だけどね」
聖良「そうですか」
聖良「理亞」
理亞「ん?」
聖良「come on」
善子「姉妹で!?」
理亞「うん」
善子「了承すんのかい!」
ーーー
ーーー
絵里(しかし…)
絵里(局長からの命令、高坂探し…)
絵里(結局いろいろ問題発生で、全然出来ない…)
絵里(極秘だし、なんとか執行官、それに亜里沙の目から離れて行動するには…)
絵里(……)
絵里(そうだ……亜里沙だ)
ーーー
ダイヤ「……交流?」
絵里「えぇ。千歌のときと同じよ。状況が状況だからこそ、緊急時に連携がとれやすいように、お互いを知ることは大事よ」
絵里「そして、私は少し出張に向かうから。その間は『亜里沙に』指示をもらって」
絵里(これでいいはず。亜里沙、あの子。なにも言わずに離れると、たぶんついてくるし…みんなにも出張だといえば、…目をそらせるはず)
ダイヤ「まあ…そういうことなら」
絵里「頼むわね。それじゃ、私はもういくから」
ーーー
亜里沙「潜在レズのあなた達と話すことなんて一つもありません」
ダイヤ「ま、まあそういわず」
亜里沙「あなたたちは、犬として扱われていればいいんです。欠陥品でありながらも、生活してられることにせめて感謝することね」
ことり「なんなのこの子…」
海未「絵里がいなくなった途端、態度が…」
亜里沙「執行官ごときがお姉ちゃんを呼び捨てにするな!!」
亜里沙「そもそも私はお姉ちゃんが監視官になることも反対していたのに! こんなところにいたらお姉ちゃんまで侵されちゃう!」
亜里沙「だから私がきた! 悪いものを近づけさせないために!」
亜里沙「調べはついてるの! あなたたち、長髪二人! 元監視官、けれど係数の上昇で執行官落ちした!」
亜里沙「乱れているの! そうつまるところ、風紀が!」
ことり「委員長みたいな事言い出した」
亜里沙「とにかく! お姉ちゃんが戻るまで、あなた達と広めるものも深めるものもない!」
海未「……」
ーーー
絵里(……さて)
絵里「高坂穂乃果……」
絵里(これは仮説だけれど、高坂穂乃果は単独で行動している……わけではない)
絵里「それならすぐに足はつく……誰かに匿われている可能性」
絵里(もしくは拉致、監禁…)
絵里(それに……これも憶測だけど)
絵里(係数が、ない。そんな特異な体質者を、……見逃さないような人物、さいきん知ったし)
絵里(まさかこんなにはやく、また来ることになるとはね)
ーーー
千歌「で、どこへ行くっていうのさ」
梨子「ロシアよ。私の知り合いがいるの。……前に電話してた人」
梨子「とりあえずあなたを会わせてみないとね……ちょっと変わった人だけど、世界を正すには必要な人だから」
ーーー
ツバサとあんじゅ。
絵里。
そして梨子と千歌。
三組がロシアへ向かう。
たった一人、ある人物にあうために。
鞠莉「へっくし!」
ーーー
真姫「さいきん、私忘れられてないかしらね」
海未「そんなことありませんよ」
真姫「こっちだっていろっいろ調べてんだから。……まえに起きた、暴動事件ね。街中でいきなりレイプやら、集団での暴走ね」
真姫「なんでかわかったわよ」
海未「理由は?」
真姫「薬物。それもみたことないような、ね」
海未「薬物、ですか」
真姫「どこからの流出なのかはいま調べてるけど、効果はあの時の状況の通り。係数を下げることができる」
真姫「精神剤みたいな役割かしら」
真姫「なんでもいいけど、……当然、そんなもの、合法じゃない」
真姫「そもそも危険ドラッグのような反応もあるのに」
真姫「どこのどいつよ、こんなもの流したの」
海未「日本国内からでしょうか」
真姫「それならすぐに見つけられる……あーあ、仕方ない。本当は嫌なんだけど」
真姫「あれつかうわよ」
メモリースクープ。
脳波をスキャンして記憶の中の視覚情報を読み取って投写するモンタージュ技術のことで、専用の椅子とヘッドマウントディスプレイからなる機器。
スキャンされる人間にとっては、記憶の強制的な追体験となる上に増幅されるため相応の負担と危険があり、体調をチェックしながらのモニタリングとなる。
海未「ってやつですよね」
真姫「捕らえた潜在レズがいるでしょ? もしかしたら、直接顔が割れるかも」
ーーー
ーーー
ーーー
真姫「は〜いお疲れ。…って、返事できないか。死んではないけど、だいぶ疲れたでしょうね」
「あ、ぁあ、あ……」
海未「それで、なにかわかりましたか?」
真姫「もうそりゃ、ばっちり」
真姫「みなさい、これ」
真姫「元潜在レズ、執行官の小原鞠莉」
真姫「異例の係数低下によって自由の身。海外にとんで何してるかと思えば、こんなことしてたのね」
海未「……」
海未「場所は?」
真姫「ロシアね。……そういえば絵里も…あ」
海未「え?」
真姫「あ……いや。そういえばクォーターよねって」
海未「知ってますが…」
真姫(いけないいけない。…なぜかはしらないけど、出張先のことを教えるなって言われてたんだった)
海未「……」
ーーー
海未「なにか、私たちの知らないところで物事が動いてるようですね」
ダイヤ「そのようですが、…私たちではどうしようもありません」
ダイヤ「行動しようにも、あの監視官じゃ外出許可なんて降りそうにもないですし」
海未「そうとなれば、やることは一つです」
ことり「というと?」
海未「あの監視官……亜里沙に信用してもらうしかありません」
ダイヤ「あそこまでの執行官嫌いだと話さえ聞いてもらえそうにないけど…」
海未「過度に接する必要はありません」
海未「仕事の中で、芽生えるものです」
ダイヤ「ですが、あの監視官。かなりのやり手ですわよ? よっぽどでもなければ『一人で問題ない』とか言い出しそうですわ」
ことり「格闘センスもあるし」
海未「だからこそ、亜里沙が行きたくて仕方ない、その上で……」
海未「難易度が高い仕事を」
ーーー
真姫「だからって私のとこにすぐ来るよね」
海未「あなたが頼りなんです」
真姫「まァそう言われて、悪い気はしないけど。……そうね」
真姫「……」
真姫「残党狩り、ってとこかしら」
海未「残党……ですか」
真姫「前に、係数を偽って好き放題暴れた連中がいたでしょう? それらのね」
真姫「潜在レズが大嫌いみたいだし、食いついてくるんじゃない?」
海未「ですが、まだ例の薬を所持されていたら、なにも……」
真姫「それはないと思うわ。あれ、副作用もなかなかきついみたいだし、それに私個人でも調べたけど」
真姫「効果はだんだん弱まっていく。かなしいいかしら、そこは結局ドラッグね。良いのは最初だけ、最後は破滅」
真姫「……とにかく、これなら食いつくと思うわよ」
ーーー
亜里沙「なるほど、あの事件の」
亜里沙「そういうことなら、やりましょう。私一人で」
海未「待ってください。単独行動は危険です」
亜里沙「危険? なにがかしら。私にとってこれくらい、危険でもなんでもない」
亜里沙「薬に溺れた連中に、私が何か遅れをとると?」
海未「いえ、そもそも。今回のこれは正式な案件ではないのです」
海未「監視官のみが行け、という内容ならばいいでしょう。そうでなければ、執行官は連れていくべきです。それに」
海未「あなたの留守中、執行官だけが残され、その執行官たちが何か問題を起こせばどうなるか。お分かりですね?」
亜里沙「……」
亜里沙「ふん。勝手についてきなさい」
ーーー
ーーー
ーーー
ロシア。
千歌「さむ…」
梨子「初めて? 寒さには適応してね」
千歌「日本が暖かすぎるんだよ」
千歌「……っていうか、ここって…あれじゃん、海外版公安局とかっていう…」
梨子「いいから。あんまりキョロキョロしてると変に思われるわよ」
梨子「あと、私、こっちでは監視官っていう扱いだから」
千歌「え? なにいってんの?」
梨子「日本じゃお尋ね者でも。ここじゃ私は正義の側なのよ」
千歌「……治外法権かな」
梨子「単純な話よ。もっとね」
梨子「きちんと試験を受けて、受かるだけの結果をみせた」
梨子「それだけ」
千歌「……」
ーーー
鞠莉「久しぶりね、梨子……その子は?」
梨子「例の免姓体質者よ」
鞠莉「へぇ? その子が」
鞠莉「パッと見、そういう感じにはみえないけど」
梨子「見た目だけじゃわからないことばかりよ」
鞠莉「ふふ、そうね」
鞠莉「──初めまして、私は小原鞠莉。よろしくね」
千歌「……」
鞠莉「まあ警戒するわね。でもここに来た、ということは、なにかしらを受け入れたってことよね?」
鞠莉「さて、それはそれとして…」
鞠莉「今回はまたどうして? 遠路はるばると」
梨子「途中で連絡もしたけど、サンライズシステムの全貌よ」
鞠莉「あぁ…あれね」
梨子「あれがある限り、薬だよりじゃいつまでも自由にはなれない」
鞠莉「そうね…ごもっとも」
鞠莉「さて……だとしたら、どうするの?」
鞠莉「システムの全貌がわかったところで…それを理解するなんて……」
鞠莉「……」
鞠莉「え、あ。そうか」
梨子「ええ、サンライズシステムなら」
梨子「ここにもある」
千歌「…!」
鞠莉「あ〜〜〜そういうことね…」
鞠莉「でもそれ、私への負担大きいわね…」
梨子「それなら私だってそうよ」
梨子「やるしかないの、協力して」
2スレ目まで来てエタってほしくないなあ…
今まだ出てないのって花陽(と雪穂?)だけだっけ
鞠莉「はーいはい」
梨子「さて、それじゃあ部屋、借りるわよ」
ーーー
千歌「ここは?」
梨子「前から私が借りてたところ」
梨子「好きにつかって」
千歌「……」
千歌「手入れされてるみたいだね」
梨子「一応頼んでおいたから」
梨子「いつ帰ってくるかわからない人間の部屋の掃除なんて、面倒だったでしょうけど」
千歌「……それで、これからは?」
梨子「その前に一度休みましょ。飛行機も疲れたし」
梨子「日本食を出してくれるレストランがあるの。行きましょ」
ーーー
花陽「は〜い、お待たせしました!」
千歌「……ご飯多くないですか?」
梨子「ここはこれくらいが普通よ」
千歌「まぁいいけど…」
梨子「食べたら図書館にいくわよ」
千歌「図書館、なんでまた」
梨子「調べたいことがあるの。人類がいつ滅んだのか」
千歌「滅んだ、って……」
梨子「実際滅んだようなものじゃない。そこから知りたいことがあるの 」