
「医療保険を外国人が不正利用」裏付けないまま対策先行
西村圭史2018年11月3日15時20分
政府が目指す新たな外国人材の受け入れ拡大の議論を機に、外国人の公的医療保険の使い方に国会などで注目が集まっている。
外国人による不正の広がりを示す調査結果を持たないまま、すでに国は不正防止対策に動いており、これに対して「人権侵害だ」と批判の声が上がる。
安倍晋三首相は31日、参院本会議で外国人の公的医療保険のあり方について、
「すでに日本人労働者と等しく適用されており、今回の新たな外国人材の受け入れに伴い、制度見直しは考えていない」としながらも、「適正な利用に向けた対応について検討を進める」と述べた。
国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えた。
自民党の厚生労働部会は29日の決議で、在留外国人と公的医療保険に関する党内の議論を踏まえ、外国人が他人の保険証を使う恐れなどを念頭に、
「運用の強化や法改正を含めた制度的な対応の強化」や「関係機関での連携強化」を政府に求めた。
政府も外国人による医療保険の使い方を注視。外国人受け入れの総合対策を議論する閣僚会議では7月、今後対応すべき項目に「医療保険の不適切使用の防止」を盛り込んだ。
10月2日に第4次安倍改造内閣が発足した際にも、安倍首相は厚生労働相に、不正防止に取り組むよう指示した。
※略※
厚労省は昨年3月、外国人の国保加入者が2015年11月から1年間、加入後半年以内に高額医療の基準とされる80万円以上を使った1597件を調査した。
不正の疑いがあったのは、高額薬を利用した2人のみ。加えて、治療後すぐ出国した12人も調べたが、8人は不正が認められず、4人は追跡できなかった。
厚労省は「不適正事案を疑う事例は、ほぼ確認できなかった」と結論づけた。(西村圭史)
https://www.asahi.com/articles/ASLB146J7LB1UCLV006.html