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子どもの薬誤飲、どう防ぐ? 6カ月過ぎたらここに注意
子どもが誤って薬をのんでしまう事故が後を絶たない。年末年始の帰省の時期。普段は子どものいない人も注意が必要だ。家ではどんなことに気をつければいいのか。
「パソコンデスクの棚(高さ140センチ)の上の箱に入れていた父親の抗菌剤を取り出し、誤飲した。床にある箱を踏み台にしてパソコンデスク(高さ80センチ)によじ登り、棚に手が届いたようだ。医療機関で胃洗浄を実施した」(2歳児)
「叔母の睡眠導入剤や精神安定剤が机に置いてあり、子どもが全て飲んでしまった。ふらふらしていたので病院を受診すると、急性薬物中毒で6日間の入院になった」(3歳児)
医療機関から消費者庁に寄せられた事故情報だ。
家庭ではどんなことに気をつければいいのか。子どもの成長に応じた事故の特徴や対策がある。
【6カ月〜1歳半】=身近にあるものを手に取り何でも口に運ぶ
・塗り薬(チューブや軟膏(なんこう)容器)の誤飲が多い
・包装ごと口に入れたり、かんで破いたりするなど通常の取り出し方でない方法で誤飲
・子どもの手の届く低い位置に置かれていた例が多い
→医薬品を床など低い位置に置いたままにしない
【1歳半〜2歳】=周囲への興味関心が高まり、人のまねをする
・のみ薬(錠剤)の誤飲が増える
・足場を使って高さ1メートル以上の場所にある医薬品を取り出す。引き出しや戸棚、かばんの中の医薬品を誤飲した例も
→錠剤シートやボトルを自分で開けて誤飲する可能性があるため、大人の医薬品の保管に特に注意する
【2歳〜】=興味を持って好んで手に取る
・錠剤に加えて、水薬の誤飲が目立つ。のみやすいよう甘く味付けされたシロップ剤を大量に誤飲した例も
・お菓子と間違えてドロップやゼリーなどの医薬品を誤飲
→机やカウンターなど子どもに見える場所や手の届く高さに置いたままにしない。子どもが見ていないところで片付ける
(消費者庁の消費者安全調査委員会の資料などから)
もし医薬品を誤飲してしまったら、子ども医療電話相談(#8000)のほか、日本中毒情報センターの「中毒110番」でも相談できる。
開けにくい包装、日本では広がらず
家庭での管理に加え、医薬品の包装や容器に子どもには開けにくい「チャイルドレジスタンス(CR)」という機能をつける対策もある。強く押さないと錠剤を出せないシートや、押しながらふたを回さないと開かないボトルなどだ。
欧米では普及しているが、日本では導入が進んでいない。国や業界団体が導入を検討したが、結局、統一した対策はせず、各社の対応に任されることになった。なぜなのか。
国の研究班の代表を務めた土屋文人・元国際医療福祉大学特任教授によると、欧米ではCR対策にかかる費用を薬の価格に上乗せできるが、日本の制度では上乗せできないため、製薬会社のコスト負担が大きくなる。高齢者が使いにくくなり、服用率が下がるのではと懸念する声もあったという。
また、欧米では比較的対策しやすいボトル入りの医薬品を処方することが多いが、日本では錠剤シートで必要な分を処方することが多い。
薬袋や箱、一般販売はまだ
薬を保管する袋や箱にCR機能をつける方法もある。商品の開発は始まっている。
包装メーカーのタキガワ・コーポレーション・ジャパン(千葉県船橋市)は、特定の場所に親指を入れ、左右に押し広げないとチャックが開かない袋「こまもり袋」を開発。17年にCRの米国規格も取得し
今年、子どもの安全に役立つ製品などを表彰する「キッズデザイン賞」にも選ばれた。8月から、大手薬局チェーン「クオール」の一部店舗で、小児用薬が処方された際に配られている。
丸金印刷(千葉市)は約5年前から誤飲防止の商品開発に取り組んでいる。昨年キッズデザイン賞を受賞した「子ども誤飲防止機能カートン」は、箱の一部を押しながらスライドしないと開かない。錠剤シートの裏面に貼る
「子ども誤飲防止ラベル」は、子どもがかみ切りづらいフィルムで作られている。
ただ、いずれも一般向けには販売されていない。「数千単位の発注がないと生産できない」「一般消費者のニーズがあるかわからない」などが理由だ。
土屋さんは「親などがこうしたCR対策商品を手に入れられるよう、薬局での販売やイベントでの配布などを検討すべきだ。薬の誤飲リスクを大人や社会が十分に認識し、子どもを守るための商品を定着させることが大切だ」と指摘する。(