https://mainichi.jp/premier/business/articles/20201109/biz/00m/020/014000c
創業家出身トヨタ社長が明かした“悔しさと反発心”
トヨタ自動車の中間決算会見
トヨタ自動車は11月6日、2020年9月中間決算を発表した。新型コロナウイルス感染拡大で生産、販売が世界的に減少した影響を受け、同社の営業利益は4〜6月期に前年同期比98%減の139億円に落ち込んでいたが、7〜9月期には5060億円と同23%減まで持ち直した。
徹底したコスト抑制や、中国、米国で販売が持ち直したことが業績回復の主因だ。5月に発表した業績予想で、営業利益を年間5000億円としていたが、7〜9月期だけでこれを達成し、今回、年間予想を1兆3000億円に引き上げた。
中間決算発表に初めて登場
会見はオンラインで行われ、豊田章男社長(64)が登場した。同社長が中間決算会見に姿を見せるのは09年の社長就任以来初めて。「コロナ危機という有事であるということで出席した」と説明した。
この日、報道陣らとの質疑が1時間余り行われた。そのなかで、日本生命保険の清水博社長が質問に立った。決算発表に他社のトップが出席し発言することは普通はないことだ。ところがトヨタは18年5月の決算発表から、大株主や事業パートナーにも決算説明会の案内をしている。
トヨタ自動車の決算会見で質問する日本生命保険の清水博社長
最初の年はそうした出席者のなかで永野毅・東京海上ホールディングス社長(現会長)が質問に立ち、2年目の19年5月は宮田孝一・三井住友銀行会長が質問した。日本生命の清水社長は18年からこの決算会見に出席していたが、今回、質問の順番が回ってきた形だ。
清水氏はまず、トヨタの業績回復と業績予想の大幅上方修正に「敬意を表する」と述べた。そのうえで、豊田社長が会社の発展だけでなく未来の社会作りのため疾走しているように見えるとたたえ、「社長を突き動かしているものは何か」と尋ねた。
豊田社長が語った「悔しさ」
これに対して豊田社長は「私はメディアを中心にあまり評価されていないので、くすぐったいほどの評価をいただきありがとうございました」と謝意を表した。そして自分を動かす原動力について「一つは、悔しさなんだと思う」と述べ、次のように語り始めた。
「社長になったときから、私が言われ続けてきたことは『あなたは苦労を知らない。現場も知らない。だからあなたにはできないでしょう』だった。お手並み拝見。失敗するのを待たれるという。『そらみたことか、ほら失敗したね』というのを、周りが待っている中で私が何とかここまでやってこられたのは、数々の危機に遭遇したからだと思う」
リーマン・ショックで大赤字に転落したさなかの09年に社長となった。10年には米国での大規模リコール(車の無償修理・回収)問題を契機にトヨタへの批判が広がり、米下院公聴会で謝罪した。創業家直系としてトップの座に就いて11年。豊田氏が周りの目をどう感じてきたか、あからさまな思いを語った。そして、次のように続けた。
「数ある危機。ピンチをどうチャンスに変えていくかというところで、『あなたにはできないでしょう』というところを、何とか『あ、できましたね』と言っていただくように、ずっと負け嫌いの気持ちで頑張ってきた」