https://www.tokyo-np.co.jp/article/191451
最賃は「早期に全国平均1000円」を目指す政府の方針により、2016年からコロナ禍の20年を除いて3%超の引き上げが続いた。岸田政権も目標を引き継ぎ、参院選では日本維新の会を除く与野党が引き上げ自体に賛成している。
厚生労働省の調査では、最賃引き上げで自らの賃金が影響を受ける労働者の割合は、12年度の4.9%が21年度に16.2%に増えた。「経営者は厳しくても引き上げが重要だと分かっている」(中小企業団体幹部)との声も出てきた。
業績が厳しい企業の負担を抑えつつ引き上げを続けることはできるのか。有識者からは「産業別」の最賃を活用する意見が出始めた。労使の申し出により通常の最賃より高い水準で設定できるが、現在は形骸化している制度だ。医療従事者などでつくる労働組合「日本医労連」が今年、看護・介護職で新設を目指したが、労働者数の要件を満たしていないなどの理由で却下された。
最賃について、日本総研の山田久氏は「今年だけでなく今後も引き上げを続けることが重要」と強調する。具体策として産業別に最賃を議論する学者と労使代表による会議の立ち上げを提案。「この会議が業界の状況に合わせて産業別の引き上げ額を決めるようになれば、コロナ禍などで厳しい状況の業界は回復後にハイペースで引き上げるなど、柔軟な対応ができるようになる」と説明した。