ネット右派はいかにして生まれたか
『ネット右派の歴史社会学』の伊藤昌亮氏へのインタビュー
https://www.toibito.com/interview/social-science/sociology/2961/3 戦略としての反知性
―真実かどうかではなく、使えるかどうかが情報の価値を決めているのであれば、SNSに陰謀論があふれるのもうなずけますね。
かれらはそれが本当だと思っているのではなく、本当だと思っているふりをしているきらいがあり、それがフェイクの増殖する大きな要因にもなっています。
本当かどうかを確かめるのはめんどくさいし、そういうのはそもそも――攻撃対象である――知識階級の仕事なので、そこで勝負をしても勝てない。
だから実証なんかしないんだと。
知識階級に対抗するためにあえて反知性的な態度をとっているところがあって、恐ろしいことに、それがかれらの「知」なんですよ。
――だとすると、たとえばトランプ元大統領の発言に対して
左派系のメディアがいくらファクトチェックをしたところで、支持者にとっては痛くもかゆくもないわけですね。
そう。次から次へと新しいものが投入される。それは別に陰謀だろうと虚偽だろうと構わない。
それが自分たちの作戦なんだと思っている以上、もう勝ちようがない。
メディアや知識階級は負けるべく宿命付けられているところがあって、それはやはり恐ろしいことですよね。
――議論自体が成り立たないというか、そもそも議論の土俵に立つ気がない。
議論をしたら負けるから議論はしない。事実かどうか検証するということも含め、実証的に考えるという行為自体を否定してしまっている。
議論や検証をするのは知識階級であり、その存在を否定したいから、知を創出する手続き自体を無視するんです。