■政官業マスコミに大きな責任
日本の政治はなぜ、これほど堕落してしまったのか。
私は「政治家と官僚、マスコミ、大企業を中心とした経済界に大きな責任がある」とみている。彼らは国民を真実から遠ざけ、持ちつ持たれつの関係を築いて、互いに自分たちの利益を貪(むさぼ)ってきた。
政治が、国民の願いや疑問に答えないまま「きれいごと」や「建前」に終始しているうちに、いつの間にか、世間の常識や実生活から離れて「嘘でもデタラメでも、法律に触れなければ、なんでもOK」という、「異様なパラレルワールド」が繰り広げられる世界になってしまったのだ。
同じような現象は、欧米でも進行中だ。
ドナルド・トランプ前米大統領は一握りの政官財界勢力を、米国を動かす「ディープ・ステート」と非難して、大統領選を優勢に戦っている。
わずか44日の超短命政権に終わった英国のリズ・トラス前首相は「行政国家に倒された」と述懐している。彼女は「小さな政府」を訴え、半世紀ぶりの超大型減税を打ち出したが、それに猛反対する官僚や政治家たちに引きずり降ろされてしまった。
先の欧州議会選では、保守勢力が大きく議席を伸ばした。
だが、例えば、マリーヌ・ルペン党首が率いるフランスの国民連合(RN)は、つい10年前まで「排外主義のトンデモ政党」とみなされていた。支持拡大は、膨大な移民流入に有効な対応策を打ち出せなかった歴代政権の失政に対する反動である。
11月の米大統領選でトランプ氏が復活すれば、欧米の保守勢力は勢いづくだろう。
日本の政治が「見るも無残な状態」にあったとしても、「いまは大変革の真っただ中なのだ」と考えればいい。落ちるところまで落ちなければ、復活もないからだ。ただし、「底がどこにあるのか」は、まだ誰にも見えない。
◇長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア―本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。