アメリカのドナルド・トランプ大統領は2日夜、欧州連合(EU)からの輸入品に対する関税発動を「近いうちに」開始すると発言した。フロリダ州の私邸からホワイトハウスへ戻るためメリーランド州の軍統合基地に到着した際、BBCなど記者団の質問に答えた。
トランプ大統領は、EUが「本当に(アメリカを)いいように利用してきた」と批判し、「この国の車を受け入れず、この国の農産物も受け入れない。向こうはこちらからほとんど何も受け入れないのに、こちらは何百万台もの車や大量の食料と農産物など、なんでもかんでも受け入れている」と述べた。
対EU関税の発表について予定表があるのかBBCが質問すると、トランプ大統領は「予定表があるとは言えないが、かなり近いうちのことだ」と答えた。
イギリスを関税の対象にするつもりはあるかとのBBCの質問には、「どうなるか様子を見る。そうなる」と答えた。だが、さらに意味を尋ねられると、「もしかしたらそうなる」と言い方を変え、自分が本当に懸念しているのはEUとの貿易だとして「欧州連合とは確実にそうなる」と述べた。
さらにトランプ氏は、「イギリスはやりすぎている。でもそれは、なんとか改善できるはずだ」と話した。
大統領はさらに、キア・スターマー英首相について「これまでとても親切だった」と述べ、「何度か会ったし、何度も電話で話した。とてもうまくいっている」と話した。
トランプ大統領は、カナダとメキシコの両首脳とは3日にも関税について話し合う予定だと述べた。トランプ氏が1日に大統領令で発動を命令した両国への重関税は、4日深夜0時に発動の見通し。
トランプ氏は1日、カナダとメキシコと中国からの輸入品に25%の関税を、カナダからのエネルギー輸入には10%の関税を課すと発表。各国は、アメリカからの輸入品に対して報復関税などの対抗措置を発表している。
カナダについてトランプ氏は記者団に、報復措置をとるならさらに関税率を引き上げると述べ、カナダが「もう何年もアメリカにひどいまねをしてきた」と批判した。
「カナダの人たちは大好きだが、カナダの指導部とは意見が違う。そこで何かが起きる。でも向こうがゲームをしたいなら、それもかまわない。やりたいだけゲームをしよう」ともトランプ氏は述べた。
メキシコについては、すでに「とても良い話し合い」をしているものの、中毒者がはびこることにつながっている麻薬性鎮痛剤「フェンタニル」や移民のアメリカ流入をメキシコ政府が食い止めなければ、「もっとひどい関税」を実施すると、トランプ氏は警告。
「これはある意味、報復的な措置だ」と大統領は述べ、「何百万人もの人がメキシコとカナダからこの国に流れ込んだ。そんなことは許さない」と強調した。
■アメリカ人は「わずかに痛み」
トランプ大統領は、関税の影響でアメリカ国民が「短期的にはわずかに痛み」を感じることになると認めたものの、関税発動の正当性を強調。「国民は理解している」と述べた。
「アメリカは世界中のほとんどすべての国から、ぼったくりに合ってきた。全部じゃないがほぼすべての国に対して、赤字を抱えている。それを変えるつもりだ。今までずっと不公平だった」ともトランプ氏は述べた。
「我々はもう何年も皆を助けてきたのに、正直言って、向こうはそのありがたさを分かっていないと思う」とも述べた。
同日朝にトランプ氏は自らのソーシャルメディアでも、「多少の痛み」には価値があると主張。「我々はアメリカを再び偉大にする。そのための代償は支払うにふさわしいものだ」と書いた
■アジア市場で株価下落
3日午前のアジア株式市場では株価の下落が続いた。香港のハンセン指数は1.3%、日経平均株価(225種)は2.4%、韓国の総合株価指数(KOSPI)は3%、オーストラリア証券取引所(ASX)の主要指数「ASX200」は1.8%、それぞれ下落した。
中国大陸の金融市場は、旧正月の休暇のため閉じている。
一方、米ドルは堅調で、カナダドルに対して20年ぶりの高値を記録した。中国のオフショア人民元は過去最低を記録した。
トランプ政権の関税政策に伴い各国の貿易関係が悪化する懸念の中、市場は不透明な情勢に直面している。