神戸市にある理化学研究所などの研究グループは、
他人に移植しても拒絶反応が起きにくい特殊なiPS細胞を使って重い目の病気を治す臨床研究を行った患者5人のうち1人で、
網膜に膜状の組織ができ、取り除く手術をしたことを明らかにしました。
グループによりますと膜状の組織は移植した細胞からできた可能性が高いということですが、
iPS細胞を使ったことによる特有のリスクではなく、経過を慎重に観察しながら臨床研究は継続するとしています。
神戸市にある理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーと神戸市立医療センター中央市民病院などの研究グループは、
他人に移植しても拒絶反応を起こしにくい特殊なiPS細胞から網膜の細胞を作製し、
「加齢黄斑変性」という重い目の病気の患者に移植して治療する世界で初めての臨床研究を5人の患者に行っています。
グループによりますと、去年6月、70代の男性患者に行った2例目の移植で、
網膜に膜状の組織ができ、患者を改めて入院させ、取り除く手術を行ったということです。
膜状の組織はiPS細胞から作った細胞を注射で入れた際に漏れ出てできた可能性が高いとしていますが、
別の細胞で行った治療でも報告されていることから、iPS細胞を使ったことによる特有のリスクではないとしています。
また、この患者の視力に変化はないことなどから、経過を慎重に観察しながら臨床研究は継続するということです。
会見した高橋プロジェクトリーダーは「今回は臨床研究における重篤な有害事象として初めてのもので、
細胞の注入のしかたなどを改善していきたい」と話しています。
〈「想定された範囲内」〉
日本医療研究開発機構でiPS細胞を使った再生医療の研究を支援している東京医科歯科大学の赤澤智宏教授は
「今回の事象は、iPS細胞以外の細胞を移植した場合も起こり得るリスクで、
手術を行ううえで想定された範囲内だととらえている」としたうえで、
「今後、iPS細胞を使ったさまざまな臨床試験が計画されているが、そうした試験への影響は全くないと考えている。
ただし研究者には、新しい治療を行ううえでのリスクを患者にしっかりと説明し、
事前に対策を十分に講じてもらいたい」と話しています。
NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180116/k10011291031000.html