東北大学(東北大)は、ランダムに並べた構造の中にも隠れた対称性があり、
同じ透過確率を与えることを見出したと発表した。
これは従来の光学の多重反射の概念では説明できない結果となる。
同成果は、米国ライス大学のHaihao Liu氏(研究当時:東北大学理学部に短期留学)、
東北大学 大学院理学研究科 物理学専攻 博士課程後期のM Shoufie Ukhtary氏、
齋藤理一郎 教授によるもの。詳細は、「Journal of Physics: Condensed Matter」に掲載された。
Haihao氏らは今回、AとBの2種類の誘電体多層膜(膜厚が波長の1/4)の電磁波の透過確率を計算した。
通常、多層膜がN層ある場合には可能な多層膜の構造は2のN乗通りあることとなり、
電磁波は、異なる膜の境界面では反射(多重反射)が起こるので、
透過確率も2のN乗通りであることが考えられる。
しかし、計算結果では透過確率の値は、わずか(N/2+1)通り(Nが偶数の場合。奇数の場合は、N+1通り)しかなかった。
例えば、N=20 だと、多層膜の構造は220=100万通りあるはずだが、計算で得られる透過確率はわずか11通りしかない。
これは、多層膜の中に、同じ透過確率を与えるような、隠れた対称性があることを示している。
Haihao氏らはさらに、この対称性を見つけ、さらに構成する多層膜に対して整数パラメータを定義し、
整数パラメータを用いた透過確率の公式を導出した。
研究チームは同成果に関して、「この結果は、試行錯誤によって発見したものだが、
複雑な多重反射が、1つの整数で記述できるということを示しており、従来の光学の概念にない、
驚くべき結果だ」とコメントしている。
なお、同成果を記した論文は、
「Journal of Physics: Condensed Matter」に2017年に発表された論文の中で、
卓越した論文として選ばれる、「2017 JPCM spotlight論文」として選出された。
図:ランダムにN枚並べたAとBの2種類の誘電体多層膜への電磁波の入射、透過、反射の概念図。
iは膜のラベル、Liは膜の種類(AかB)、Iは入射する電磁波、Tは透過確率、Rは反射確率を示す。
2のN乗通りのすべての構造を計算すると、透過確率が取り得る値の種類は(N/2+1)通りしかなかった (出所:東北大学Webサイト)
マイナビニュース
https://news.mynavi.jp/article/20180223-588560/